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米中「限定軍事衝突」はあり得る

南シナ海「人工島」攻撃が焦点に

2020年9月号

 経済、先端技術で先行して激化した米中冷戦は香港問題をきっかけに政治・軍事にわたる全面衝突に拡大した。今、最も危うい要素と言われ始めたのが、中国が南シナ海に建設した人工島だ。トランプ政権は同海域での米艦艇の自由航行を活発化させ、七月には米空母二隻が参加する日豪との三カ国軍事演習を実施した。中国は反発しつつ南シナ海の体制固めを急ぐ。米国内では「現政権のうちに対中封じ込めを後戻りできない段階まで進めるべきだ」という強硬論が台頭している。南シナ海の人工島攻撃は現実的な段階に進んでいる。
「七月十三日のポンペオ国務長官の南シナ海声明は米国の明確な戦略転換であり、画期的な重要性を持つ」。米戦略国際問題研究所(CSIS)は八月に発表した分析リポートでこう指摘した。
 ポンペオ声明は「中国の南シナ海における権益主張は完全に違法なものであり、世界は南シナ海を中国の“海洋帝国”とは決して認めない」とするものだった。言葉の激しさから、日本でも大きく報道されたが、その意義はあくまで、激化する米中冷戦の文脈における対中強硬発言のひとつというもので、南シナ海における米・・・