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メコン川の水を強奪する中国

下流域諸国は「水量激減」の窮地

2020年9月号


 中国から東南アジア五カ国を貫く大河メコン川で、中国の急激なダム建設により水量激減が起きている。昨夏と今夏は連続して、下流の東南アジア諸国で百年以上なかった水位低下が起こった。メコン川下流の水不足は二〇〇八年以降、頻発しており、今後はさらに深刻な国際問題になりそうだ。
 カンボジアのトンレサップ湖は、メコン川にそそぐトンレサップ川の逆流でできた、世界でも珍しい湖だ。雨季と乾季では水量が五~六倍も違う。小さい時でも琵琶湖の四倍ほど。栄養分豊富で大魚も多く、「カンボジア人のたんぱく質の七割を供給する」とされる、恵み豊かな湖である。
 例年なら五~六月に逆流が本格化する。ところが、今年は八月上旬まで逆流が全く起きなかった。
 湖の水位は見る見る下がった。現地取材したカンボジア人記者によると、「漁民たちは、この時期なら一日で八キロもの漁獲があるのに、今年は五百グラムもとれずに困り果てていた。深刻な食糧不足が起きている」と語った。トンレサップには巨大な水上住宅群があり、百万人以上が暮らしている。
 湖が干上がったのは、メコン川の水不足による。そ・・・