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社会・文化

また発生「M資金詐欺」の研究

なぜコロッと騙されるのか

2020年8月号

 才子才に溺れる―。社会的、経済的に成功を収め、己の能力を過信した挙句、初歩的なペテンに引っ掛かってしまう。連合国軍総司令部(GHQ)が戦後接収した金や銀を原資とした秘密資金を特別に提供するなどと持ちかけて「申込金」や「手数料」を巻き上げる詐欺は昭和三十年頃から連綿と続いてきた。GHQのウィリアム・マーカット少将の頭文字から「M資金」と呼ばれる誰も目にしたことがない架空の巨額資金の話に、なぜまんまと騙されるのか。

被害届が出るのはレアケース

 六月十一日、神奈川県警は詐欺容疑で武藤薫容疑者ら三人の男を逮捕した。武藤らは飲食チェーン大手「コロワイド」の創業者であり会長の蔵人金男氏に、二千八百億円にものぼる「基幹産業育成資金」を提供できるともちかけて、申込金と称して繰り返しカネを要求した。最終的に約三十二億円を騙しとったとみられている。県警幹部が「あんな幼稚な手口に騙されるもんかね」と漏らすほど典型的なM資金詐欺だったようだ。
「M資金のたぐいに騙される人間には特徴がある。自分が選ばれた人間であると過信・・・

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