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経済

《企業研究》東 宝

映画・演劇「コロナ赤字」の痛苦

2020年8月号

 好事魔多し―とはこのことだろう。前二月期に空前の好決算に沸いた映画配給・興行最大手、東宝が一転、新型コロナウイルス禍に「呻吟」(市場関係者)している。二〇二〇年三~五月期(第1四半期=1Q)の営業利益は前年同期比八二・五%減の二十八億円。最終利益はわずか二・一八億円にとどまり、同九八%も落ち込んだ。四半期決算開示がはじまって以来、1Qとしては最低の水準だ。
 期初に「未定」としてきた二一年二月期通期の業績予想は売上高が一千六百二十億円と前期比三八・三%の減収。営業利益は同八一・一%減の百億円、純利益は同八六・三%減の五十億円にとどまる。営業利益が二百億円を割り込むのは一二年二月期以来、九年ぶり。純利益はリーマンショック直後の〇九年二月期に記録した二十二・九四億円以来の低水準となる。
「〇九年二月期は世界金融危機による株価暴落で百三十二億円にのぼる保有有価証券の減損計上を迫られたことがすべて。こうした要因を除いた、いわば本業ベースでここまで業績が落ち込むのは二〇〇〇年以降、経験がない」。東宝関係者は肩を落とす。

「記録ずくめ」決算からの転落・・・