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連載

をんな千一夜 第41話

高杉晋作「妻妾」の長い余生
石井 妙子

2020年8月号

《マサ と うの》

 今回のコロナ禍によって世の中はどう変わっていくのだろうか。ヨーロッパではペストの大流行が封建社会を揺さぶり、中世の終焉を招いたと言われるが、日本でも幕末にコレラが猛威を振るい明治維新を後押しした、との説がある。幕府が開国した結果、西洋発の疫病が蔓延したのだとされ、「尊王攘夷」熱をさらに高めたものらしい。
 高杉晋作も尊王攘夷派の青年志士のひとりだった。彼は藩命により初めて故郷を出立し江戸に上る途上、大井川付近の村でコレラ患者が迷信深い人々によって袋叩きにされる光景を目撃している。
 高杉は天保十(一八三九)年に現在の山口県萩市で生まれた。家は長州藩士の名門で父は藩政に与る身。三人の妹に囲まれ跡取りのひとり息子として大事に育てられた。だが、腕白坊主は次第に家庭の封建的な価値観からはみ出していく。危険思想の持ち主として、父をはじめとする上級藩士たちが忌み嫌っていた松下村塾の主宰者・吉田松陰に心酔するようになり、親に隠れて入塾。そこで学ぶうちに次第に頭角を現していった。
 塾生たちは「狂」の字を好み、高杉も「一狂生」を・・・