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経済

トヨタの危うい「中国傾斜」

絡め取る習近平政権の「思惑」

2020年8月号

 トヨタ自動車の中国への傾斜が急激に深まっている。中国政府が爪弾きにしていたトヨタのハイブリッド車(HV)を新エネルギー車の優遇枠に入れ、天津での新エネ車工場新設も後押し。トヨタ側は「虎の子」の水素燃料電池車(FCV)技術の中国メーカーへの供与に踏み切る。トヨタの牙城、北米の販売が停滞し、強い地盤のアジアも失速するなかで、中国市場は成長の最後の砦になりつつある。中国側には米国による技術包囲網を、トヨタを使って突破しようという戦略も垣間見える。トヨタは中国にのみ込まれかねない危うい中国接近に踏み込んだ。

技術の「軍事転用」の可能性

 昨年、トヨタはグローバル販売で大きな転機を迎えていた。中国市場での販売実績が初めて、日本国内販売を上回ったのだ。中国(香港・マカオ含む)の百六十二万六百九十八台に対し、国内は百六十一万百六十九台。米国の売り上げはすでに日本の一・五倍の規模で、「米国頼みのトヨタ」になってはいるが、中国にも抜かれた。
 中国での販売は二〇〇九年の七十一万六千百三十四台から十年間で二・二六倍に・・・