前法相の河井克行衆議院議員と妻の河井案里参議院議員が公職選挙法違反（買収）容疑で逮捕された。二人は否認しているが、昨年の参院選で、地元議員ら九十四人に現金計約二千五百七十万円を配って票のとりまとめを依頼した疑いである。規模の大きさ、乱暴な配り方、二人の開き直った言動が世間を呆れさせ、「権力亡者の変わり者夫婦」が起こした特異な出来事というイメージが広がった。
　だが、それでは事の本質は見えない。変人どころか二人は「地盤（選挙母体）・看板（家柄）・鞄（政治資金）」の「三バン」を持たない叩き上げの政治家が、政界でのし上がるには何をしなければならないかを体現した「成功者」だったからだ。世襲でない国会議員は程度の差こそあれ、同じ出世を狙っていると言って過言でない。それは、首相にしたい政治家が払底している政界の貧困も裏面からあぶり出す。河井夫妻とは何者か。なぜこうなったのか。二人の軌跡を検証しよう。

「カネづる」鳩山邦夫に食い込む

　克行議員は広島県三原市生まれ。家に風呂がなかった庶民の出である。地元の進学校・・・