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連載

《世界のキーパーソン》マーカス・ラッシュフォード(サッカー・ イングランド代表)

天才選手が慈善活動でも「大金星」

2020年7月号

 マーカスの母親メラニーは早起きだった。職場に行く前に、マーカスを小学校に連れていった。彼はそこで、国提供の朝食を食べた。
 最低賃金で働き、五人の子供を抱えたシングル・マザーには、毎日の食事を賄えなかった。おかゆと卵、トースト。メニューは全く同じだが、お腹は満たされた。
 才能は幼時からきらめいていた。七歳で名門「マンチェスター・ユナイテッド(マンU)」のアカデミー・システムに入った。母親は「早く引き取って下さいな」と懇願。チームは喜んで引き受けた。
 十八歳になったばかりの二〇一五年十一月に、一軍招集された。三カ月後、ヨーロッパリーグの試合で二得点。同リーグ戦での、チーム最年少得点記録だ。それまでの記録保持者は、一九六〇~七〇年代に活躍した、イングランドの伝説的名選手ジョージ・ベストだ。
 速くて、うまくて、スペクタクル。デビューシーズンでは八得点をあげた。マンUのファンは、とてつもない才能が目の前で開花しつつあるのを確信した。
 イングランド代表招集は、二〇一六年夏の欧州選手権。対ウェールズ戦の途中出場で、これまた最年少出場記録を・・・