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連載

大往生考 第7話

ある看護師の最期の迎え方
佐野 海那斗

2020年7月号

 親しい友人の死を経験した。亡くなったのは、筆者が勤務するクリニックの看護師である。死因は肺がん、享年六十六だった。
 彼女は台湾出身。二十代で来日し、看護師資格をとった。その後、日本人男性と恋愛結婚、三人の子を育て上げた。孫を可愛がり、趣味の登山を楽しむバイタリティ溢れる女性だった。死に際も彼女らしかった。
 彼女が体の不調に気づいたのは二〇一九年三月だった。同僚の看護師から「呂律が回っていない」と指摘された。この看護師は非常勤で、久しぶりに会った彼女の変化に驚いたという。病気の進行は急速だったのだろう。私は全く気づかず、自らの不明を恥じた。
 彼女は、その場で脳のMRI検査を予約した。そして、そこに写っていたのは多数の病巣だった。放射線診断専門医の読影レポートには「多発性転移性脳腫瘍、おそらく肺がん」と記載されていた。彼女は「私は看護師だから大丈夫。きっちりと受け止めます」と平静を装っていたが、動揺が隠せないのは明らかだった。
 翌日、全身のCTを撮影したところ、肺に原発巣が確認され、肝臓など多くの臓器に転移が認められた。ステージⅣBの肺がん・・・