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連載

本に遇う 第247話

嘘は政治家の始まり
河谷 史夫

2020年7月号


 政治家が嘘をついても誰も驚かない。政治家とはいんちきくさいものと観念している。権力欲がつよいだけで、その仕事は泥水稼業だ。一票のお願いにペコペコする乞食のくせに、当選するとふんぞり返る。およそ国民から好意を持たれ、尊敬をかちえるといった代物がいたためしはない。
 東京都知事選を控えた五月末、評伝作家石井妙子の『女帝 小池百合子』が出た。「女帝の嘘八百」が詳細に書かれてある。コロナ騒ぎで、小池都知事を連日テレビで見た。一見さわやかな弁舌だが、どうも信じられないのである。
 読みながら、松本清張の『ゼロの焦点』と水上勉の『飢餓海峡』が想起された。知られたくない過去を秘めている人がいる。嘘を抱えて生きるのは辛いだろうが、暴かれるのはもっと辛かろう。それで事件が発生するのだが、女帝に付き纏う虚言疑惑もただならない。
 最大の疑念は「カイロ大学を首席で卒業」という学歴である。一九七一年、十九歳のときカイロに留学、カイロ・アメリカン大学でアラビア語を学び、翌七二年にカイロ大学文学部社会学科に入学、七六年卒業。「四年で卒業した日本人は初めて」というのが小池・・・