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WORLD

「使える核兵器」軍拡競争の恐怖

世界終末時計が指す「残り百秒」

2020年7月号

 シカゴに本部を置く米科学雑誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」が一月末、核戦争による地球最後の日までの残り時間を示す「終末時計」を早め、残り一分四十秒とした。一九四七年の設置以来、最も「終末」に近づいたことになる。
 ノーベル賞受賞者らが参画して核戦争の危険度に警鐘を鳴らす「終末時計」が従来、破局を示す午前零時に最も近づいたのは一九五三~六〇年の残り二分だった。九一年のソ連崩壊で同十七分まで巻き戻された後、徐々に早まり、遂に今年、最も終末に近づいた。同誌はその背景として、核拡散や気候変動対策の遅れ、サイバー空間における偽情報の流布を挙げた上で、「時計の針を早めた最大の理由は、政治指導者が危機を回避してきた従来の手段が劣化し、リスク管理の国際政治機構が無力化したため」としている。冷戦期に比べて、現在のリーダーに危機意識が欠如しているということだ。
 代表の一人である米ジョージタウン大学のシャロン・スクアッソーニ教授は、「米ソ中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄、イラン核合意の崩壊、北朝鮮の核開発継続で核兵器の脅威は高まっているのに、指導者の危機管・・・