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経済

「トヨタは大丈夫」は本当か?

早まる自動車産業の「斜陽化」

2020年6月号

 自動車産業が歴史的な不振に陥りつつある。新型コロナウイルス感染の世界的拡大であらゆる大型商品の需要がしぼむのは当然だが、産業の裾野が広く、設備投資の大きい自動車では落ち込みに耐えうる時間は決して長くはない。その中で、トヨタ自動車は販売台数だけでなく、資金力やグループ企業の体力など「勝ち組」に数えられている。だが、今後、長期化が確実な自動車不況に対し、日本生産至上主義、販売の米国偏重、「技術よりコスト」によるイノベーション力の低下など、トヨタならではの弱点も浮かび上がる。トヨタは本当に大丈夫なのか?
 米国四六・六%減、ドイツ六一・一%減、英国九七・三%減、フランス八八・八%減、ブラジル七六・〇%減―。四月の主要市場の前年同月比の自動車販売台数は大幅減どころか、英国など実質ゼロに近づいた市場も多かった。日本は外出自粛が緩く、自動車の主要市場が地方という事情もあり、二八・六%減と比較的減少幅は小さかったが、世界の自動車産業は青ざめている。最大の市場の中国は三月の四三・三%減から四月は四・四%増となったが、これは政府の補助金の付いた商用車の売り上げが三一・六%増となった影響にすぎ・・・