現代史の言霊 第26話
六月の対話 -米ソの大量破壊兵器削減交渉-
伊熊 幹雄
2020年6月号
《あなたはどうして私を信じないのか》
ミハイル・ゴルバチョフ
(元ソ連共産党書記長)
二〇〇一年九月十一日の米同時多発テロ事件を受けて、米軍のアフガニスタン空爆が始まった同年秋、筆者はウズベキスタンの首都タシケントで待機していた。食材と味覚豊富な「シルクロードの古都」は、なかなか楽しかった。
この国では、別の題材で世界的特ダネを画策した。アラル海にあるボズロジデニヤ島が、旧ソ連の生物化学兵器の極秘研究所だったと聞いた。現地で馴染みになった旅行会社に「行けないだろうか」と頼んでみた。少し前まで「島」だったが、アラル海が干上がったことで、陸続きになっていた。
全速力の自動車で十時間以上。途中でカザフスタン領に入るので査証(ビザ)が必要だ。障害は大きいが、簡単な特ダネなどない。
結局、旅行会社の幹部が「周辺は山賊が跋扈し、運転手が誰も行きたがらない」と断ってきた。
冒険は夢と消えたが、幸運でもあった。数年後、現地入りした研究者たちは、炭疽菌が研究棟の屋外に廃棄されたこ・・・
ミハイル・ゴルバチョフ
(元ソ連共産党書記長)
二〇〇一年九月十一日の米同時多発テロ事件を受けて、米軍のアフガニスタン空爆が始まった同年秋、筆者はウズベキスタンの首都タシケントで待機していた。食材と味覚豊富な「シルクロードの古都」は、なかなか楽しかった。
この国では、別の題材で世界的特ダネを画策した。アラル海にあるボズロジデニヤ島が、旧ソ連の生物化学兵器の極秘研究所だったと聞いた。現地で馴染みになった旅行会社に「行けないだろうか」と頼んでみた。少し前まで「島」だったが、アラル海が干上がったことで、陸続きになっていた。
全速力の自動車で十時間以上。途中でカザフスタン領に入るので査証(ビザ)が必要だ。障害は大きいが、簡単な特ダネなどない。
結局、旅行会社の幹部が「周辺は山賊が跋扈し、運転手が誰も行きたがらない」と断ってきた。
冒険は夢と消えたが、幸運でもあった。数年後、現地入りした研究者たちは、炭疽菌が研究棟の屋外に廃棄されたこ・・・