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WORLD

コロナワクチン巡る「サイバー戦」激化

開発情報「強奪」で各国が暗闘

2020年6月号

 新型コロナウイルスは流行地域を変えながら世界中に広がり続けている。もはやウイルスの消滅は期待できない。そこで注目されているのが、新型コロナを終息させるのに必要となるワクチンを誰が最初に実用化するかだ。
 新型コロナが国家の経済活動に大きな打撃を与えていることから、世界中が一刻も早くワクチンを手にしたいと焦るのは当然だ。現在世界では百三十に及ぶ組織がワクチン開発に乗り出している。その中でも米中のいくつかの企業による開発競争は激化しており、夏には最終治験段階に向かうところも出てきそうだ。
 ワクチンの特許を獲得すれば莫大な利益を得られるだけでなく、国家としての対外的な影響力強化にも繋がるため、開発は勝つか負けるかの様相となっている。そんな新たな「戦場」で今、セキュリティ関係者らが注視しているのが、ワクチン開発などに狙いを定めた国家的なサイバー工作の激化だ。
 FBI(米連邦捜査局)と米国土安全保障省(DHS)は五月十三日に、中国政府が米国の研究機関や医療機関を狙ってサイバー攻撃を仕掛けていると発表した。人民解放軍のサイバー部隊や、彼らに操られている民間のハッ・・・