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イスラエル「コロナ特需」の商魂

「細菌戦ノウハウ」が売り物に

2020年6月号

 中東の軍事大国イスラエルが、新型コロナウイルス対策に軍事技術をフル活用して、大きな成果を上げている。
 生物・化学兵器対策で培われた技術や、テロ攻撃対応のノウハウも「コロナとの戦い」に投入された。同国が誇る諜報機関「モサド」や「シンベト」は、公衆衛生対策で驚異的な貢献をした。感染第一波をしのいだ今は、「コロナウイルス・ビジネス」で世界に打って出ようともくろんでいる。
 イスラエルの感染症対策は、極めて厄介な時期に始まった。日本に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号のイスラエル人乗客、イタリアから帰国したイスラエル人らから、初期の感染例が確認されたのは、二月下旬のこと。同国は折から、三月二日に総選挙を控えていた。
 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、感染対策と選挙戦を同時にこなさなければならなかった。そこで、国家危機に対処する「常連」である、モサド、シンベト、国防省、保健省、財務省の専門家でチームを作り、戦争で攻撃された時と同様の態勢で臨むことになった。ウイルスの感染拡大は、生物兵器攻撃より難しい課題だ。司令塔はネタニヤフ首相自身である。
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