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連載

《世界のキーパーソン》方方(作家)

「武漢日記」で共産党の嘘を暴く

2020年5月号

「昨日、李文亮が死んだ。私は気が狂いそうだ。全武漢が彼のために涙を流している」
「正午に叫びが沸き起こった。李文亮よ、家族と子供は俺たちが面倒を見るぞ、と。今夜、李文亮が息を引き取った時刻に、武漢市民は自宅の明かりを消す」
 死の街となった中国・武漢で、方は二カ月にわたって日記を書き続け、オンラインで公開した。平易、簡潔な文体で、庶民の日常をつづった日記は、読者をくぎ付けにした。この間、当局から表立った介入は伝えられていない。
 文章は二月七日のものだ。李文亮は新型コロナウイルスを最初に内部告発した医師で、自ら感染して死んだ。日記は、この時すでに武漢市民が李の勇気に強く共感し、公式発表前に死を知ったことを伝えている。中国政府が李を表彰したのは、三月五日だった。
 一九五五年、南京生まれ。家庭は典型的な革命知識層に属し、父親や叔父は学者である。
 一家はその後、武漢に移り、彼女とこの都市の長い縁が始まった。武漢大学で中国文学を専攻。卒業後は地元テレビ局での勤務を経て、最初は詩を、次いで小説を書いた。
 八七年に発表した中編『風景・・・