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政治

パンデミックで民主主義が危ない

トーマス・カラザース (カーネギー国際平和財団副所長)

2020年5月号

 ―パンデミックで、民主主義は危機を迎えました。

 カラザース(以下TC) 感染対策のために、どの国の政府も非常事態を宣言し、強制力を伴う強大な権限を得た。国によっては、保健衛生上の必要以上に、権力を拡大しているところもある。世界各地で軍の出動も増えている。
 メディア規制強化、表現の自由制限など、市民の基本的人権に対する攻撃は、中国やエジプト、フィリピンなどで確認されている。
 米国でも保守層は、報道の自由に対し否定的になった。統治機構、法の支配といった民主主義の根幹に対してまで、侮蔑・軽視の風潮がある。
 さらに、ビッグデータの進歩が感染対策に使われている。ロシアや中国は、感染対策以上に、国民監視の道具として発展させるだろう。
 市民社会はいろいろな方面から大きな圧力にさらされている。世界各地で昨年、あれだけ頻発した街頭デモはすっかり消えた。

 ―経済危機で、政治はどんな影響を受けますか?

 TC 米国ではすで・・・