《佐藤 寛子》

　小さなマスクをすると、眼ばかりが目立つ。今から十三年前、第一次安倍晋三政権の終わり頃、この人は今と同じような、力のない眼をしていた。
　外出自粛を夫が国民に訴える中、昭恵夫人は芸能人を集めてレストランで花見をし、懲りずに今度は大分で神社に集団参拝して非難ごうごうである。自民党員を見てみれば大臣でさえ、誰も布マスクを着用していない。もはや、寄り添ってくれるのは愛犬のミニチュアダックスフントだけなのか。政権も安倍家も、空中分解しつつあるように見える。
　戦前の桂太郎内閣、戦後の佐藤栄作内閣を抜いて、安倍政権が歴代最長記録を達成したとニュースになったのは、二〇一九年十一月のこと。最長内閣のベスト４は、安倍、桂、佐藤、伊藤博文で、いずれも山口県出身。明治維新から続く、長州閥の権勢が見て取れる。
　安倍総理が記録を塗り替えるまで佐藤内閣が戦後は最長政権であったわけだが、その佐藤は安倍の大叔父であり、祖父、岸信介の実弟にあたる。
　三月号の本欄で書いたが、佐藤茂世という猛母が、スパルタ・・・