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経済

「食料輸入依存」日本の弱点

コロナで露呈「安倍農政」の欠陥

2020年5月号

 政府が全国に緊急事態宣言を発令したことで社会的混乱が危ぶまれたが、スーパーなどの店頭は混乱を回避し、消費者も落ち着いている。しかし、経済活動の制限が長期化すれば、食料自給率が三七%(カロリーベース)しかない日本の食料安全保障が脅かされる。そのダメージは貧困層や途上国に重くのしかかるだろう。
 近年の食料危機でもっとも深刻だったのは、二〇〇七年から〇八年にかけての穀物相場の高騰だ。アフリカ、アジア、中南米の途上国で暴動が相次ぎ、一部の国が自国の食料の確保を優先するために禁輸に踏み切ったことが、食料不足の「負の連鎖」を招いた。この危機は、〇八年のリーマン・ショックによって穀物相場が暴落することで終息した。
 一一年の東日本大震災では、物流が寸断され局所的な飢餓が現実になった。空港や道路が復旧した後も、どこへ何を届ければよいのかというソフト面での対応が整わず、緊急物資でさえ滞留した。首都圏では在庫をほとんど持たないコンビニエンスストアから一瞬にして食品が消え、ペットボトル詰めの水が不足して韓国から緊急輸入した。
 一五年には、米西海岸の労使交渉が長期化し、港湾・・・