三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

コロナ禍を「傍観」するトヨタ

社会貢献で存在感なき最大企業

2020年5月号

 新型コロナウイルス感染で世界が大混乱に陥った今、政治だけで苦境を脱することはできない。経済を動かす力を持つ大企業の覚悟と行動が大きな意味を持つ。日本では言うまでもなく売上高約三十兆円の最大の企業であるトヨタ自動車こそ先頭に立つべき企業である。だが、コロナ禍に対し、トヨタが景気てこ入れや医療崩壊阻止など社会のために動いた事実はわずかだ。二月以降で目立ったのは場違いなNTTとの業務資本提携発表程度。自動運転など車の大変革期と重なったコロナ禍は企業の持つ理念、哲学と真の実力を浮かびあがらせている。

「豊田社長に感謝しよう」の異常

「Too little, too late(あまりに小さく、あまりに遅い)」。 四月七日、豊田章男社長が発表したトヨタグループの新型コロナウイルス感染対応への協力パッケージを聞いた、在日アメリカ大使館関係者は驚きを隠さなかった。
 公表されたのはトヨタ本体が医療用防護マスクの生産準備に入り、アイシン精機などと簡易ベッドの生産も検討する、マスクや防護服の調達にトヨタのグローバルネ・・・