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経済

史上初「マイナス原油」の衝撃

元売り首位「JXTG」に漂う暗雲

2020年5月号

 ニューヨーク市場で四月二十日に発生したマイナス原油価格の衝撃が続いている。専門家は「テクニカルな問題」と冷静さを装うが、現実は新型コロナウイルス感染拡大にとどまらない原油の構造的な需給ギャップの拡大が背景にある。消費減退がさらに進めば、マイナス価格の頻発も含め、原油価格が長期低迷するだろう。業界再編で築いた寡占体制で、この世の春を謳歌していたJXTGホールディングス(HD)など日本の石油業界は、いよいよ幕引きに向けた最後のステージに突入せざるを得ない。
「マイナス原油」が起きたメカニズムは既に多く語られているように、WTI原油の引き渡し場所のオクラホマ州クッシングの原油タンクが満杯寸前になり、原油の現物を貯蔵できず困った業者が投げ売りに出たことにある。局所的な話にみえるが、実は世界中で原油タンクも洋上備蓄に使えるタンカーも空きはわずかになっている。
 世界の主要な原油市場で最終決済を「現物受け渡し」にしているのはWTIだけで、北海ブレント原油を取引している今はICEグループ傘下の旧ロンドン国際石油取引所は、お金を払えば取引を手仕舞える「差金決済」。それでもWTIの・・・