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連載

大往生考 第4話

ある青年の生と死の決断

2020年4月号

 死に際は生き様を反映する。忘れられない患者がいる。
 その患者は十八歳の男性だった。肉腫(サルコーマ)という悪性腫瘍を発症し、私が主治医を務めていた。
 この青年、いささか「やんちゃ」だった。北関東の高校を中退し、都内のアパートで彼女と同棲していた。生活費はアルバイトで稼いでいた。髪は金色に染め、夜は悪友と街に繰り出していた。
 手術や抗がん剤治療を繰り返したが効果はなく、前任者から引き継いだ時には、すでに他臓器に転移していた。病状が思わしくないことは本人も自覚していた。
 扱いにくい患者だった。医者の言うことを聞かないのだ。
 三日間の予定の抗がん剤治療が始まった最初の夜に、点滴の管を引き抜いて帰ったこともあった。
 夜中にポケットベルが鳴って、病棟に電話すると、担当の看護師から「患者さんがいなくなりました」と言われ、タクシーで病院に駆けつけた。彼がいなくなったベッドには、血まみれの中心静脈カテーテルが置かれていた。
 問題行動は、これだけではなかった。薬は規則正しく服用しないし、入院中に外出が許可されると、翌朝・・・