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経済

前田道路「買収防衛惨敗」の真相

東証を激怒させた「大失態」

2020年4月号

「上場企業としてあり得ない! 本当にこんなことをしたら課徴金だ!!」。二月中旬、東京証券取引所の幹部は怒り狂っていた。怒りの矛先を向けられたのは前田道路だ。
 前田道路が自らの筆頭株主の前田建設工業から、敵対的TOB(株式公開買付)を仕掛けられたのは記憶に新しい。三月十二日までのTOBの結果、最終的に前田建設は目指していた五一・二九%の前田道路株の取得と子会社化に成功したわけだが、その過程で繰り広げられた駆け引きが東証の逆鱗に触れた。
 前田建設が一月二十日に発表したTOBに反対し、なんとか撤回に追い込もうとした前田道路が繰り出した策は「クラウンジュエル」の一種とも言える特別配当だった。クラウンジュエルとは、自社の価値ある部門や資産を他社に売り払ったり手放したりすることで、自社の価値をわざと下げて買収を諦めさせようとする買収防衛策のひとつだ。クラウン(王冠)からジュエル(宝石)を取り除くためこう呼ばれる。
 今回、前田道路が繰り出した特別配当は、四月十四日の臨時株主総会での承認を前提に五百三十五億円もの特別配当金を三月六日時点の株主に対して支払うというもの・・・