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政治

新感染症に無策の 「国家安全保障局」

政権「危機管理力欠如」の象徴

2020年4月号

 三月六日付新聞各紙は、首相動静についての訂正を一斉に掲載した。五日午後六時九分の国家安全保障会議「九大臣会合」は、「緊急事態大臣会合」の誤りだったという内容だ。各社首相番記者の代表が首相秘書官に電話で名称を尋ねた際に、「キュウダイジン」と「キンキュウジタイダイジン」を聞き違えたらしい。他愛ないミスのようだが、どこの社の記者も本社デスクも誰一人気づかなかったところに、同会議の形骸化が象徴的に表れている。
 国家安全保障会議(日本版NSC)の形態は三つある。中核の「四大臣会合」(首相・官房長官・外相・防衛相)は外交・防衛政策の司令塔で頻繁に開かれる。「九大臣会合」は、文民統制の観点から副総理・総務相・財務相・経済産業相・国土交通相・国家公安委員長が加わり、国防に関する重要事項を審議する。「緊急事態大臣会合」は首相が指定した他の閣僚も加わって、重大事態への対処について首相に建議するが、明確な権限があるわけではない。
 これまで政府が「緊急事態」として想定していたのは、在外勢力の領海侵入・不法上陸、放射能物質テロ事件、大量の避難民が押し寄せる場合など。いずれも「人間の意図・・・