世界の人々が感染症に目を奪われていたせいで、台湾の政治に大きな地殻変動が起きたことはあまり注目されることはなかった。三月九日に台湾最大野党、国民党の主席に就任した四十八歳の江啓臣氏は党改革に着手、本土化路線を強調して従来の親中路線を事実上否定した。党内には抵抗勢力があるものの、江氏の改革が成功すれば、台湾の政治の構図の中から中国との統一を主張する勢力がほぼなくなり、台湾独立の動きが加速するのは必至だ。同時に、国民党を足場に台湾に浸透し、両岸統一を目指す中国の習近平政権の試みは完全に失敗し、対台湾政策を大幅に軌道修正する必要に迫られる。
　三月十八日に台北市で開かれた国民党の中央常務委員会で、党主席に就任したばかりの江氏は、新型コロナウイルスへの対応について「効率的な防疫体制を構築するため、緊急事態宣言を出すべきだ」と提案した。早速、党内から「（民進党の）蔡英文総統の権限をさらに強化させたいのか」といった不満が寄せられた。国民党支持者の評論家、黄智賢氏は「民進党の別動隊」と江氏を批判した。
　蔡政権は「先手防疫」でコロナウイルス感染者を少なく抑えているとして「台湾の・・・