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経済

《企業研究》MS&AD

内憂外患で沈みゆくメガ損保

2020年3月号

 六年ぶりのトップ交代に踏み切る損害保険業界大手のMS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)。柄澤康喜社長が代表権のない会長に退き、後任には傘下の中核事業会社、三井住友海上火災保険の社長をつとめる原典之取締役が昇格する。鈴木久仁会長は退任。あいおいニッセイ同和損害保険社長を兼務する金杉恭三取締役が新設の副会長に就く予定だ。六月下旬の株主総会とその後の取締役会を経て正式に就任する。
 原氏は一九七八年、まだ「大正海上」と呼ばれていた時代の三井海上火災保険に入社。二〇〇八年三井住友海上の執行役員となり、常務、専務、副社長を歴任後、一六年から同社社長をつとめている。自動車保険部長時代に国内生損保業界を揺るがせた保険金不払い問題の収拾に奔走するなどして頭角を現し、早くから「将来のトップ候補」として本命視されていた。今回「満を持す形」(周辺筋)で、巨大損保グループの舵取り役を担うことになる。
 とはいえ情勢は厳しい。ライバルの東京海上HDと資産規模や正味収入保険料で双璧を成しながら一八年度(一九年三月期)における最終利益の水準は一千九百二十七億円と東京海上の七・・・