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トランプ「中東和平案」は実現する!?

イスラエル偏重なのに「奇妙な評価」

2020年3月号

 イスラエルとパレスチナについて、ドナルド・トランプ米大統領が発表した「中東和平案」が奇妙な評価を受けている。中東各国が「二国家共存を葬るもの」と反発し、国連や欧州連合(EU)も「原則として反対」の立場をとった。
 しかし、イスラエルによるヨルダン川西岸の占領が始まって半世紀が過ぎた。パレスチナ自治政府が求める形での「独立国家」は日々、遠のいている。新提案が出る見通しはなく、「トランプ案」が相当長期にわたり、事実上唯一の解決案として生き残る可能性が強い。

孤立深めるパレスチナ

 イスラエル観光最大の目玉は、エルサレムの旧市街周辺に集まっている。石畳が敷き詰められた複雑な街路や聖墳墓教会、「嘆きの壁」「岩のドーム」は、ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒にとっての聖地である。ここから南に二十分ほど車で行くと、在エルサレム米国大使館がある。一昨年、ごうごうたる国際的批判の中で開所した。旧市街のにぎわいとは程遠く、もの寂しい一角に映る。
 それもそのはず。大使館は、第一次中東戦争(一九四八年)・・・