《企業研究》イオン
二十三年ぶり新社長の真っ暗な船出
2020年2月号
「(社長に就任した)当時、世襲世襲と相当に言われたのでこれで終わりにしたいと申し上げた。もし本当に厳密にそういうことになるならば(息子を)入社させることもよくなかったのかもしれない。(今は)本人がどういうふうに考えるかわからないので、何とも答えようがない」。今年一月十日に千葉・幕張の本社で行われた記者会見。世襲について問われた創業家出身の岡田元也社長はその真意を韜晦するかのようにこう口を濁した。
岡田はかねて「世襲にメリットはない。創業者一族による世襲は自分限りで終わらせる」と繰り返し断じてきた。もとよりこれを額面通りに受け止める向きは少なかったにせよ、世襲問題に関する日頃の歯切れの良さはすっかり影を潜めた格好だ。
二十三年ぶりの社長交代を決めた流通最大手のイオン―。三月一日付で吉田昭夫副社長が社長に昇格。岡田は代表権のある会長に就任する。
吉田は一九八三年、当時「ジャスコ」と呼ばれていたイオンに入社。総合スーパーマーケット(GMS)事業の中核、イオンリテールの関東開発部長などを歴任後、イオンモールに転じ、同社社長を兼任したまま二〇一九年・・・