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連載

日本の科学アラカルト 114

アンモニア循環社会を目指す 生成・利用技術の開発

2020年2月号

 直接嗅げば気絶するほどの強烈な臭いで知られるアンモニアは、工業的には極めて重要な物質だ。主に肥料の材料として世界各国で生産され、その量は年間一億五千万トンを超える。ドイツの科学者、ハーバーとボッシュが工業的なアンモニア合成法を発明したのが一九〇六年。それから百年以上が経過した今も、二人が開発した「ハーバー・ボッシュ法」に取って代わるアンモニア量産法は出てきていない。
 そして近年、アンモニアは肥料の原材料だけでなく、「エネルギー・キャリア」としての役割に注目が集まっている。アンモニアの化学式はNH3で、水素原子を三つ抱えているため、燃料電池で使用する水素を運ぶことが期待される。水素ガス(H2)は爆発性が高く、運搬、保管などあらゆる局面での安全性確保がネックだ。比較するとアンモニアは安全性が高い。また、アンモニアを直接燃焼させることも可能で、当然ながら二酸化炭素は排出されない。
 今年に入って、名古屋大学大学院工学研究科のグループは新たなアンモニア合成のための触媒を開発したと発表した。
 ハーバー・ボッシュ法では高温(四百℃以上)、高圧(百~三百気圧以上)・・・