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連載

現代史の言霊  第22話

二月の釈放  1990年(「アパルトヘイト」解体)
伊熊 幹雄

2020年2月号

 一九九〇年
《曽祖父は今の南アフリカを不幸に思うでしょう》

プムラ・マンデラ(ネルソンのひ孫)

 昨年日本中を熱狂させた「ラグビー・ワールドカップ」は、日本を準々決勝で破った南アフリカが、三度目の優勝を果たして幕を閉じた。熱心な視聴者は、同時期に放送された映画『インビクタス/負けざる者たち』もご覧になっただろう。南アフリカが、アパルトヘイト体制を脱して最初の、一九九五年ワールドカップに、初参加で初優勝する物語である。
 この時の非白人は一人だけ。今回も、三十一選手中の非白人は十二人のみ。南アフリカ代表の「スプリングボクス」は依然として、黒人多数派の構成になっていない。白人は、約五千八百万人の人口の約九%を占めるだけなのだ。
「あっさりと女性に誘惑された」
 アパルトヘイト終焉のドラマは、三十年前の一九九〇年二月十一日、黒人指導者のネルソン・マンデラが釈放された時に始まった。
 マンデラはこの時、七十一歳。四十四歳の時に国家反逆罪の容疑で逮捕されて以後、成人人生のざっと半・・・