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経済

《企業研究》三菱電機

自殺者続出の「非人道的」社風

2020年1月号

「次に同じ質問して答えられんかったら殺すからな」「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓があるで。死んどいた方がいいんちゃう」。教育主任だった三十歳代の男性上司は、日常的にこんな暴言を繰り返しては“被害者”を追い詰めていったとされる。
 三菱電機の生産技術センター(兵庫県尼崎市)に配属された男性新入社員が二〇一九年八月下旬、三田市にある社員寮近くの公園で自殺した事件は同十一月、冒頭の暴言を吐いた当時の上司を兵庫県警が自殺教唆の疑いで書類送検するという異例の事態に発展した。
「前代未聞ではないか」。全国紙の社会部記者も指摘する。過去にも上司のパワハラが原因とみられる自殺は少なくないが、警察が動くことはほとんどなかった。仮に上司が「死ね」と言ったとしても、公判などで自殺との因果関係を立証することが極めて難しいからだ。
 捜査を担当した兵庫県警三田署がそれでも書類送検に踏み切ったのは、当の上司や周囲の複数の社員に対する事情聴取や証言などから刑事事件としての立件可能性を確信したことに加え、その悪質性を認めたからに他ならない。自殺教唆罪の法定刑は・・・