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経済

三井住友銀が融資先「裏切り」の非情

乾汽船「株買い占め」に加担

2020年1月号

「老舗の百年企業が時代の最先端に躍り出ている―」(大手証券幹部)。
 何やら威勢の良い話かと思いきや、中身は声を潜めて交わされる話である。創業から百十年強を数える東証第一部企業、乾汽船を舞台とするアクティビストファンド(物言う株主)との攻防戦が続いている。二〇一九年十一月四日には、アクティビストファンドの要求に基づいて、同社は臨時株主総会の開催にまで追い込まれた。
 乾汽船は、「神戸海運五人男」の一人として名を馳せた故・乾新兵衛が明治期に創業し、海運業華やかなりし高度成長期には光り輝いていた。しかし、そんな時代はとうに過ぎ去り、「歴史こそ古いものの、昨今は話題に乏しい企業の一社」と言われてきたのが同社である。そんなジミ線企業の株式を約二八%保有し、乾康之社長の取締役解任などの株主提案を行ったのが、アルファレオホールディングス(HD)合同会社という和製アクティビストファンドである。
 六月の定時株主総会の場で、配当増額を主張し、会社側が提案した買収防衛策の導入に反対して、一躍注目を集めた。その後、同社長の取締役解任、役員報酬の総額引き下げ、剰余金の配当、自社・・・