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社会・文化

「新作歌舞伎」大流行の危うさ

古典軽視「松竹商業主義」の罪

2019年12月号

 十二月六日から東京・新橋演舞場で、スタジオジブリの人気アニメ、「風の谷のナウシカ」を題材にした新作歌舞伎が上演される。十月十九日に発売されたチケットは一瞬で完売となった。「担当者が人気を見誤り、関係者や株主などに向けてチケットを配り過ぎたために、一般販売に回る枚数が少なく、松竹としては儲けそこなった」(演劇担当記者)という声も聞こえる。
 そんな中、ある歌舞伎俳優が今年夏に語った言葉の波紋が、今も梨園に広がっている。
「歌舞伎役者がやるから歌舞伎になる」という時代は、既に終わった―。
 こう話したのは、中村梅枝(三十二)だ。八月十七日、朝日新聞夕刊・文化欄での、中村壱太郎(二十九)との対談で、歌舞伎界の未来を憂いて漏らした言葉である。梅枝といえば、名女形・中村時蔵(六十四)の長男で将来は萬屋という名家を背負って立つ“御曹司”だ。対談相手の壱太郎も人間国宝・坂田藤十郎(八十七)の孫という名門中の名門の生まれ。二人とも、幼いころから、名優である祖父や父のもとで修業を積み、歌舞伎俳優としては恵まれた立場にある。次代の歌舞伎界を担う実力派・・・