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連載

日本の科学アラカルト 112

「第三の生命の鎖」 糖鎖研究というフロンティア

2019年12月号

 人体や他の生物の体内で重要な役割を担う「鎖」として最も有名なのは、DNA(デオキシリボ核酸)だろう。四種類の塩基が繋がったこの鎖は、細胞の核の内部に有名な二重螺旋構造で収納され、生物についてのさまざまな情報が書き込まれている。いわば、体の設計図のようなもので、すでにヒトについてその解読は完了しており、DNAの情報を使ったオーダーメイド医療などで実用化が進んでいる。
 次に代表的な「鎖」はタンパク質だ。二十種類のアミノ酸が繋がったタンパク質は人体の主要な材料であると同時に、生命活動に必要なさまざまな働きをしている。そうしたタンパク質の働きについても研究が進んでいる。
 そして「第三の鎖」と呼ばれるのが糖鎖だ。その名のとおり糖
(単糖)が繋がった物質だが、さまざまな可能性を秘める一方で、研究の段階はDNAやタンパク質と比較して遅れている。
 単糖といってすぐに思いつくのはグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)などだろうか。実際には炭素の数などによって一千種類以上の単糖があるといわれている。これが複数、つまり二つ以上結合したものが糖鎖だ。{br・・・