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連載

日本の科学アラカルト 111

次なるノーベル賞有力候補 「小胞体ストレス応答」の研究

2019年11月号

今年のノーベル化学賞を、旭化成名誉フェローの吉野彰氏が受賞した。リチウムイオン電池の開発が注目された長年の有力候補が、満を持しての受賞となった。今日、私たちの身の回りにあるリチウムイオン電池の数や、その果たす役割を考えれば、順当といえる結果だろう。
 これで二〇〇〇年代に入って以降、日本人の受賞者は十七人。日本出身者を含めると二十人に上る。「受賞ラッシュ」はいまだに続いていると言っていいだろう。来年以降も有力候補は残っている。
 吉野氏の受賞により、京都大学(学部)出身の受賞者は八人目になった。東京大学に並んだが、京大の受賞者は全員が自然科学部門での受賞だ。東大は平和賞一人と文学賞二人がいるため、自然科学部門では五人。受賞時に京大にいた山中伸弥・ⅰPS細胞研究所所長などゆかりの人物も含めると京大関係者はさらに増える。昨年の本庶佑氏に続く二年連続受賞となったが、今後も京大からの受賞者輩出が期待されている。
 その最右翼が、大学院理学研究科教授の森和俊教授だ。一九五八年生まれの森氏は、七七年に京大工学部に入学したものの、翌年には薬学部に転部したという変わり種と・・・