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連載

新・不養生のすすめ 第32話

「バリウム検査」はもう要らない

2019年11月号

 五十代の知人が診察室にやってきた。
「最近、八十過ぎた母親を胃がんで亡くした。心配だから、検査を受けたい」と不安を口にした。
 大抵の患者は、大事な親が発症した病気については詳しくなり、「自分もいつか同じ病を発症するのではないか」と悩む。子どもは親の体質を受け継ぐし、食生活など家庭環境も似ているから、心配のタネは尽きない。
 胃がんは、そのような病気の典型だ。多くの日本人が「胃がん恐怖症」となっている。長年にわたり、胃がんは最も死者数が多いがんだった。我が国の国民病と呼んでもいいだろう。生活スタイルの西欧化が進み、近年は大腸がんや肺がんが増えたが、胃がんは今でも日本人の主たる死因だ。
 国立がん研究センターが発表した「最新がん統計」によると、二〇一七年に胃がんで死亡した患者は四万五千二百二十六人で、肺がん・大腸がんについで第三位である。
 厚生労働省は胃がんの死亡者数を減らすため、がん検診を推奨している。厚労省の「平成二十五年国民生活基礎調査」によれば、四十〜六十九歳の胃がん検診の受診率は、男性四五・八%、女性三三・八%だ。国民の過半・・・