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経済

「携帯料金値下げ」 官邸の乱心

「独善」官房長官が巻き起こす迷惑騒動

2019年11月号

「端末価格についてはもう一度議論の必要がある。また官房長官に怒られるでしょうが……」
 ソフトバンクの宮川潤一副社長がつい愚痴を漏らすと、会場にはドッと失笑が巻き起こった。
 十月十六日、千葉・幕張メッセで開かれた総務省主催の「5G(第五世代移動通信システム)サミット」―。五百人の傍聴者が見守る中、楽天を含む携帯キャリア四社の首脳が一堂に会した議論の場で起きたハプニングは、菅義偉官房長官に対する今の通信業界の怨嗟と揶揄を浮き彫りにした。
 話題は、ソフトバンクが打ち出した携帯端末の半額値引きの割賦販売である。これが昨年八月、元総務相の菅氏が「携帯料金は四割下げる余地がある」と発言して以来、進められてきた電気通信事業法の改正、すなわち端末値引きの原資を通信料金の値下げへ回すよう促す競争政策に逆行するとみられているのだ。ソフトバンクには政府から有形無形の圧力がかかる。が、同社は強行突破の構えだ。
 なぜなら、後述するようにソフトバンクの販売手法は違法ではなく、また「端末価格が高止まりすれば、5Gサービスは普及しない」という・・・