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バチカンが寄付金で違法「大損投資」

「金銭醜聞」続発で窮地の法王

2019年11月号

 フランシスコ法王率いるバチカン(ローマ法王庁)に、新たな金融不正疑惑がもちあがった。従来の不正は、バチカン銀行と通称される「宗教事業協会」が舞台だったが、今回は世界中から寄せられる、善男善女の寄付金が使われたとされ、事態はより深刻だ。
 聖職者による性的虐待スキャンダルが続く中、法王は重大な窮地に立たされている。
 話は四年前にさかのぼる。
 フランシスコ法王の就任から二年たった二〇一五年。法王は、相次ぐ金融犯罪事件に対処するため、大胆な措置をとった。バチカン内に「監査総監」のポストを作り、全権を与えて法王庁を徹底浄化する狙いだ。大手監査法人「デロイト」イタリア支社から、リベロ・ミローネ氏を引き抜いた。
 ミローネ氏は慎重に動いた。チームを集めて仕事を始める時には、盗聴器や監視カメラがないか、音を立てずに調べた。
 幸い、相談役となるジョージ・ペル財務局長官(枢機卿)は気さくなオーストラリア人で、監査総監に協力的だった。自身も一四年に、財務局長官に抜擢されたばかりで、法王が掲げる、「教会の腐敗撲滅」に燃えていた。

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