ドナルド・トランプ米大統領に対する弾劾調査で、中心的役割を担うのが下院司法委員会である。同委員会がまず、弾劾勧告すべきか否かを決める。すべきとなれば、民主党が多数派を握る下院本会議に回される。下院が弾劾訴追すれば、今度は共和党が多数派の上院が弾劾すべきか否かを決める。
　日本の司法制度にたとえれば、司法委員会は警察、下院は検察、上院が裁判所と言える。その議会調査の責任者に、民主党はこの上ない適任者を配している。
　ナドラーはニューヨーク市の下町ブルックリン生まれ。政治家としてここを長らく地盤にしてきた、ユダヤ系のリベラル派である。大統領の中核支持層である、南部・中西部の白人男性にすれば、見ただけで嫌悪感を抱くような形容詞をいくつも持っている。
　本人の弁によると、幼い頃に父親が養鶏場経営に失敗して、共和党大統領だったアイゼンハワーを呪ったのが、「反共和党の始まり」だという。国中の教育機関がベトナム反戦運動に揺れた一九六〇年代に高校・大学時代を送り、進歩主義の理想を胸に刻み付けた。
　コロンビア大学を卒業後、法務の世界に入った。といっても、マンハッ・・・