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政治

安倍政権「最終章」の波乱

「官邸分裂」で早まる「死に体」化

2019年10月号

東京・平河町に立つ砂防会館はかつて田中角栄、中曽根康弘、竹下登、宇野宗佑という四人の歴代首相が事務所を置いた「影の自民党本部」ともいわれた「権力の館だ。その砂防会館には、今も「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄と宏池会(岸田派)の実権を握る古賀誠が事務所を置く。
 青木は毎週水曜日の午前中に姿を見せる。午後は競馬と並ぶ楽しみである麻雀の卓を囲む時間だ。その青木事務所の入り口に三人の政治家の名前が黒い文字で書かれている。「青木幹雄」「竹下亘」、そして八月から「吉田博美」の名前が加わった。竹下亘は四月に食道がん手術を受け、今なお療養中だ。吉田も脳腫瘍の手術をし、ことしの参院選を機に政界を引退した。吉田は青木引退後の「参院自民党の司令塔」。選挙区は長野県だったが、山口県出身で首相安倍晋三も厚い信頼を寄せていた。ぶっきら棒な物言いの半面、人情家で参院幹事長として大きな影響力を保持していた。その吉田の師である青木の事務所に机を置いた。
 形の上では共同事務所だが、八十五歳を迎えた青木の実質的な個人事務所と言っていい。

二階が安倍を追い込む「カード」・・・