《クローズ・アップ》豊田正和(日産自動車社外取締役)
「西川後任」を探す官邸の代理人
2019年10月号
不正報酬問題で西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)が辞任した日産自動車の経営混乱はますます深まっている。業績悪化に歯止めがかからず、筆頭株主である仏ルノーとの今後の関係も一段と不安定、不透明になりつつある。羅針盤どころか“船長”すら不在の日産で今、大きな力を振るっているのが、経済産業省出身の筆頭独立社外取締役で、指名委員会委員長も務める豊田正和・日本エネルギー経済研究所理事長(七十歳)である。
もちろん、昨年の失脚まで日産の“皇帝”だったカルロス・ゴーン被告のような独裁者になっているわけではない。日本政府、フランス政府がともに経営の主導権を握ろうと権謀術数を巡らすなかで、「日本政府の代理人(エージェント)」として日産のハンドルを握っている。
すでに多くのメディアが報じているが、不正報酬問題で西川社長が退任に追いまれた九月上旬の取締役会で、ただ一人、期間限定とはいえ西川氏の続投を支持したのが豊田氏だった。豊田氏は「後任社長の選定、引き継ぎなどに時間がかかることを考えれば、西川社長が来年三月まで続投する・・・