三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

原油危機「演出」するサウジとイラン

価格高騰狙う両国の「悪知恵」

2019年10月号

ペルシャ湾をはさんでにらみ合うイランとサウジアラビアが、石油価格の低迷に焦りを募らせている。九月中旬には、サウジの巨大石油施設が、イランによると見られる攻撃を受け、原油価格が一時は最大二〇%高騰したものの、被害が少ないと見られると再び下げに転じた。
 今年は中東の緊張が続くのに、北海ブレントは一バレル=六十五ドル前後という「新標準」に落ち着いている。イランとサウジは、互いに危機を演出して世界の関心を集めざるを得ない状態に陥っており、双方の危機は根深い。
 サウジ・アブカイクにある石油施設が攻撃された九月十四日。米国の報道機関に、「これはサウジにとっての9・11(米同時多発テロ事件)だ」という、「サウジ高官の発言」が伝えられた。ニューヨークではほんの三日前に追悼式をしたばかりで、発言は広く報じられたが、やがて「死者三千人超の大事件と、ドローン攻撃を比べるな」との冷静な反論が広がった。
 当初は「サウジの石油生産の半分が停止」と発表された。だが、現場で見つかった「ドローン残骸」には、爆薬は搭載されていなかった。数日後には、サウジ高官から「生産はほぼ回復」との発・・・