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経済

《クローズ・アップ》辻 慎吾(森ビル社長)

日本最高層ビル計画にみる「邪心」

2019年9月号

 森ビルが東京都心部再開発の新たな巨大事業「虎ノ門・麻布台プロジェクト」を発表した。八・一ヘクタールの敷地に日本最高層となる三百三十メートル超のビルや住宅棟、緑地などを配置する総合的な開発で、「六本木ヒルズに匹敵するインパクトを持つ」と辻慎吾社長は胸を張る。
 六本木のアークヒルズに始まった森ビルの都心再開発は、六本木ヒルズ、表参道ヒルズ、虎ノ門ヒルズと続き、その集大成が「虎ノ門・麻布台」といえる。それは、これまで森ビルがタブーとしてきた日本最高層ビルの座を今回、奪いにきたことからもわかる。現在、日本最高層の「あべのハルカス」を擁する大阪では森ビルの発表に早くも対抗しようという声が巻き起こるほどだ。八月二十二日の記者会見ではそうした辻社長の気合いの入り方が随所にうかがえた。
 オリンピックを来年に控えた東京は空前の建設ラッシュで、競技施設だけでなく、オフィスビルやホテル建設の槌音が各所で響く。森ビルは必ずしもオリンピックに照準を合わせた開発はしていないが、二度目のオリンピックを通じた東京の大変貌の一翼を担うのは間違いない。
 問題は「一将功成りて、万骨枯る・・・