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連載

をんな千一夜 第29話

日韓史から消された「王族」
石井 妙子

2019年8月号

《梨本宮方子》

韓国通を自負する新聞記者やら元外交官やらがテレビで「韓国は図に乗りすぎ」「お灸をすえられて当然」と得意げに語っている。優越感に浸りきった口調。外相に留任したい河野太郎外相のパフォーマンス。「暴支膺懲」の心向きは変わっていない。
 韓国(朝鮮)は近代まで李氏が君臨する王政の国であった。長く清に服属してきたが、日清戦争後、日本に踏み込まれてしまう。
 一八九五(明治二十八)年には、親ロシアの立場を取った王妃・閔妃が、宮中で惨殺された。主犯は長州出身の陸軍軍人で駐韓公使の三浦梧樓。三浦らは宮中に押し入ると手当たり次第に女官を刺し殺した上、王妃を惨殺し庭に遺体を積み上げて石油をかけ火を放った。事件後、日本で裁かれはしたが、証拠不十分で無罪となる。
 李氏朝鮮第二十六代の王、高宗(李煕)は閔妃を日本人に惨殺された二年後、側室の厳妃との間に男児を得る。それが李垠である。
 日本の主権侵害を国際社会に訴えようとして高宗は退位させられ、閔妃の産んだ李坧が純宗として即位し、李垠が王子に。すると・・・