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連載

日本の科学アラカルト 108

農業からインフラ調査まで ドローン活用に向けた研究

2019年8月号

「ドローン」というと、プロペラが四つないしそれ以上ついた無線操縦の航空機を想像する人が多いが、本来は「無人航空機」を意味する言葉だ。その開発の歴史は古く、第二次世界大戦中にすでに米国が実用化レベルに近い機体を開発している。その後も主に軍事分野での研究開発は続けられ、米軍は一九九〇年代には有名な無人攻撃機「プレデター」を実戦配備しているのだ。
 一方で民生用のドローンの開発もこの間、行われてきた。趣味の世界のものだったラジコンヘリコプターを、農業用に大きく活用したのは日本のヤマハ発動機だ。同社のラジコンヘリは農薬散布の現場などで世界的に使われているが、これも本来の意味の無人航空機という定義を厳密に当てはめればドローンの一種ということになる。
 複数のプロペラによって飛行と姿勢制御を行う「マルチコプター型」のいわゆるドローンが急速に普及したのは最近になってから。特に、姿勢制御に関連する加速度センサーなどの小型化と普及が進んだことで一気に身近なものになった。ドローンの活用といえば、空中撮影や荷物の運搬などが想像されるが、ほかにも民生利用という角度からさまざまな研究が日本国・・・