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連載

西風459

「京アニ」を育んだ千年の都

2019年8月号

 歴史と伝統の街である京都はその実、進取の気性に溢れた街だ。これまでも新しい文化の発展に寄与してきたこの街に、「京都アニメーション」という会社があるのは決して偶然ではない。
 京都・木屋町の高瀬川沿いにある旧・立誠小学校跡地。ここが日本映画発祥の地とされるのは、一八九七年、当時ここにあった京都電燈(関西電力の前身)で、「シネマトグラフ」という映画の上映実験が行われたからだ。琵琶湖疏水を使った水力発電で日本初の路面電車のエネルギーを供給した京都電燈が、まだ世界的にも珍しかった映画上映に携わったのである。
 そして日本映画の父と称される牧野省三も京都に生まれ、ここを拠点に映画を作った。映画の撮影が初めて行われたのは東京だったが、なぜ牧野が賞賛されたのか。
「東京で撮られるものの多くが、歌舞伎などをただ撮影したものだったのに対し、牧野はきちんとした物語をフィルムに収めようと奮闘した」
 京都造形芸術大学教授で、映画評論家でもある寺脇研はこう語る。つまり「作品」としてのクオリティは牧野のものが圧倒的だったのだ。また、こうした「映画ムラ」を支える人材が、旧・・・