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「気候変動」が金融危機の火種に

化石燃料「投資撤退」で始まる惨事

2019年8月号

「ダイベストメント(投資撤退)」
 欧米金融紙でこの文字を見かける頻度が増している。欧州を中心に年金基金や保険会社など機関投資家が次々に保有する化石燃料会社の株を売却する意向を示している。過去数年続いているこの金融の新潮流は今、さらに大きなうねりになりつつある。この急進的な動きの背景には、地球と市場を救うべく立ち上がったある金融当局者の存在がある。彼を突き動かしているのは、空恐ろしいバブル理論だ。
 その小さな源流は英国にある。ロンドンの非営利シンクタンク「カーボン(炭素)・トラッカー」が二〇一一年七月、「燃やせない炭素~世界の金融市場はカーボンバブルなのか~」と題するリポートを発表したことからはじまった。気候変動問題に、金融面から焦点をあてたものだ。同年十月に「ニュー・サイエンティスト」誌が取りあげ、さらに著名環境活動家ビル・マッキベン氏が一二年七月にローリング・ストーン誌でこれに言及し、環境団体などの間で知られるようになった。

座礁資産は「三十兆ドル」

 さらにカーボン・トラッカーは翌・・・