中国「SF小説」世界的ブームの理由
体制批判と普遍的テーマへの共感
2019年7月号
魯迅、老舎以降、ノーベル文学賞受賞者の莫言こそ生んだものの、世界に名を知られる作家を出していない中国で、この数年世界で高い評価を受けるSF作家が次々に出ている。SF界の世界最高の賞といわれるヒューゴー賞を二〇一五年にアジア系で初めて受賞した劉慈欣や同賞を一六年に受賞した女性作家の郝景芳などだ。中国を舞台にした作品が多く、現状の政治体制に対する批判が色濃く込められている一方、環境悪化やネット社会の矛盾、富の不均衡など人類にとって普遍的な視点がある。自由な言論空間が狭められるなかで、かえってSF作品の水準が高まった状況は末期の旧ソ連を思い起こさせる。
斬新な着想と現代社会への警鐘
今年の春節(旧正月)に合わせ二月五日に中国全土で封切られたSF映画『流浪地球(さまよえる地球)』。中国国内で記録的な大ヒットとなり、米国でも劇場公開され、日本ではNetflixが配信した。太陽の膨脹によって危機に瀕した地球に巨大エンジンを建設し、地球ごと移動し太陽系から脱出する壮大なストーリー。
近年の中国映画にありがち・・・
斬新な着想と現代社会への警鐘
今年の春節(旧正月)に合わせ二月五日に中国全土で封切られたSF映画『流浪地球(さまよえる地球)』。中国国内で記録的な大ヒットとなり、米国でも劇場公開され、日本ではNetflixが配信した。太陽の膨脹によって危機に瀕した地球に巨大エンジンを建設し、地球ごと移動し太陽系から脱出する壮大なストーリー。
近年の中国映画にありがち・・・