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社会・文化

高額「がん遺伝子検査」は欠陥だらけ

保険適用でも救える患者は一握り

2019年7月号

 がん患者の遺伝情報から最適な治療薬を選ぶゲノム医療の「がん遺伝子パネル検査」に対する公的医療保険の適用が六月、鳴り物入りでスタートした。検査の開発を主導した国立がん研究センター(国がん)は、約半数の患者で治療や予後予測の判断に関わる遺伝子変異が見つかり、約一割の患者が遺伝子変異に適合した特殊な抗がん剤の投与を受けたと豪語。メディアは「新たな時代の幕開け」と礼賛するが、遺伝子パネル検査は日本のがん医療を時代遅れにさせる可能性があり、患者本位との朗報からは程遠い代物だ。そもそも、日本のそれは世界の周回遅れ。福音に響く新たな手法の背後には、国がんと関係者だけが潤うカラクリが潜んでいる。
 これまでは肺腺がんにおけるEGFR遺伝子や大腸がんにおけるRAS遺伝子などの特定の遺伝子変異を個別に調べていた。だがパネル検査はがん細胞の遺伝子を一度に調べて、どの遺伝子に変異があるかを網羅的に解析できるとする。
 保険適用になった遺伝子パネル検査の製品は、国がんとシスメックスが開発した「NCCオンコパネルシステム」と中外製薬が販売する「ファウンデーションワン」。二つの同時承認は極めて・・・