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中東和平「トランプ案」の傍若無人

仲介役・米国がぶち壊す対話機運

2019年7月号

 ドナルド・トランプ米大統領による、イスラエルとサウジアラビアを極端に偏重した中東政策が、大混乱を招いている。
 六月末のバーレーンでの中東会議は、最大の当事者であるイスラエルとパレスチナ自治政府が正式参加を見送り、「トランプ和平案」は機能しないままだ。
 米政府の和平案は、大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー上級顧問がまとめ、「世紀の取引」と前宣伝されている。
 ところが、あまりにもイスラエルに肩入れしすぎているため、関係者からは「お蔵入りしたほうがよい」と酷評される始末だ。イランやシリアなど各地の問題が片付かない中で、米国は中東和平の仲介役さえ務められなくなった。

「カネが全て」のトランプ外交

 トランプ政権の「中東を見る目」は、とても分かりやすい。今年四月、ウィスコンシン州での政治集会で、トランプ大統領はサウジアラビアのサルマン国王とのやりとりを、聴衆に生々しく再現した。
「サウジアラビアはたいへんな金持ちだ。むしろ、現金以外に何も持っていない国だ。米国はこの国を・・・